少女雑誌の買い方

どうしてこういうときに限って男性店員なのか。

もっと小さな個人経営の書店にすればよかった。でも、小さな書店ではあの特別号は販売していない。

しょうがない。喜びを手に入れるためには苦難はつきものだ。清水の舞台から飛び降りるということのほどではない。何食わぬ顔で、レジに近づけ、わたし。

こんな状況になったのも、三時間ほど前にお店で聞いた情報がきっかけとなりました。

 

「『メルキャラン』って雑誌知ってます?」

「知らない。お菓子かなんかが特集された本?」

「違うんですよ。それがね……」

聞き耳を立てて見ると、その『メルキャラン』という雑誌、少女マンガの月刊誌で今女子中高生に大変な人気らしいのです。女子の憧れるシチュエーションがべたべたに描かれているため、男性が見ると「あり得ねー」と興ざめしてしまうのだと男性スタッフは言います。

五十路近くの私はそれを聞き、不覚にも、興味を持ってしまいました。なぜなら私も、まがいなりにも女子の一人であるからです。《買うっきゃない》しかも、今回は特別号で付録がついていると聞きます。《買うっきゃない》だって、私、悪い・こと・し・て・な・い・よー。だからそんなわけでやっぱり《買うっきゃない》。

う、そんなことを想いだしているうちに列が混んできた。これが大型書店のつらさ。しかも後ろに並んでいるのは女子高生だ……。

『メルキャラン』が見えないよう背中でガード。ああ、でも、なんてこった。私の番になっても、レジの男性がもたもたしている。そんなことしているうちにレジの後ろの階段にまた女子連中が。どうしてこうも女子っていうのは固まって行動するのかしら。あれ、なんかこっち見てる。特別号が大きいからだ。はやくしてよレジさんお願い。? よし、とりあえず袋には入れた。ようしこちらも、お金、払いまし、た。おしまい。

いえ、最後のビッグイベントだ!

「あ、もしもしお姉ちゃんだけど。あれ、あんたの言ってやつ、付録のついてる本、買ったから。うん。それでさ、台所にある材料切っといてくれる。帰ったらお姉ちゃん作るから。はい、はい、じゃあね。はーい」

見てる見てる。視線を背中で感じる。そう、私は妹のためにあの雑誌を買ったのです。だから私自身が夢見がちな少女ということではないのです。

さあ、帰ろう。帰ってご飯を食べよう。そしてその後ゆっくりと『メルキャラン』を読もう。

この世界には実在しない妹とじゃれ合いながらね。

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