術師

私が『ぬるうどん(つけうどん)』をお持ちすると、その人はお祈りを始めました。

一見その人はどこにでもいる一般人に見えます。服装もグレーのジャケットとパンツ。白いワイシャツが襟元から顔をのぞかせています。シックですが、おさえるところはおさえている。少なくとも、がさつには見えません。シャツを肘までまくったまま、まだお祈りは続いています。

 

儀礼が終わった時でした。

白い粉が、うどんの上にかけられました。

塩ではありません。

当店では、塩は別個ご用意しています。ですがお客様からのご依頼はありませんでした。では自前の塩? それらしいものは見当たりません。

手品? 誰に向けての?

問題は、その粉が、明らかにその人の手の中からこぼれてきたこと。どこかから取り出してきたとかではなく。

ということは、手汗?

いえいえ、誰が自分の手汗をこれから食べる食事にかけようとするのですか?

 

あれは、聖なる粉にちがいありません。

術師。

この店では、そういう人をよく見かけます。

 

お会計のときでした。

「見てましたか?」

言われて、思わず首を横にふります。

笑うお客様。

その歯の多くはかけていました。

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