郊外の若手実業家

休みの日、中学時代の同級生につれられ、郊外に数店舗お店を所有する若社長とドライブに行くことになりました。

若社長は私の同級生の知り合いで、いくつか私たちより年下なのですが、地元紙にも特集される様な急成長株だといいます。車を走らせて数十分すると、遠くに明らかに異質な、病院のような外観の白い建物が見えてきました。

 

もしかして、

「あれです」

案の定か。

「病院みたいでしょう。食事っていうのは、人を癒やす力があると思うんです。だから病院っぽい外装にしたんです。これも、本当は、救急車を買いたかったんですけど、つい勢いで買っちゃっいました」

スポーツカーをまさぐりながらそう言うと、若社長は車を一階の駐車場に止めて、私たちを二階にあるお店へと案内してくれました。

階段を上がって突き当りのドアを開けると、予想通り、ナース服姿の女性スタッフが出てきました。昔こうゆうのが流行っていた気がしましたが、郊外では新しい試みということでしょうか。ただ、それ以外は普通で、いわゆる郊外のファミリーレストランをイメージしていただければよいかと思います。私たちは社長のガイドで奥にあるVIP席へと進みます。

ホールスタッフが水をはこんできたとき、

「スマイルスマイル」と

若社長がその若い女性スタッフの緊張をほぐそうと声をかけました。

女性がそれで笑顔を取り戻したので、良い社長さんだなと思っていると、

「はい。それじゃあ、得意のモノマネまで3、2、1、キュー」

? みな、どうしたらいいか分からず戸惑いました。スタッフの女性もそんな特技はないようで、顔が逆にひきつってしまいました。

社長はため息をついてうつむくと、おもむろに顔を上げ、白目をむいた顔でスマイルをしました。だれ一人笑いません。察知した社長は顔を元に戻すと、

「まあ、なんでも好きなもの注文してください」

 

まだ午前中だったので、お腹が空いていたわけではなかったため、私たち同級生二人はハムサンドなどの軽食を注文しました。

社長は、といえば、大盛りのカレーを注文。

「カレーでそのお店が分かるんですよ」

本当かな。

というか、あなたのお店じゃないですか。

先に私たちが食べるのを待って、若社長はいただきますと一気にカレーを食べ始めました。というか、流し込む感じで、それはもう猛スピードです。

食べ終わると、社長は私たちに、すみませんと断りを入れてから、もう一杯、カレーの大盛りを注文しました。

カレー好きなんですねと私が言うと、

「まあ、普通です」

いや、けっこう好きだろそんなに食べてんだから。

「本当は健康面を考えるとサラダを注文したかったんですけど、それやっちゃうとやっぱり、ベジタリアンとかに見られちゃう怖さがあるんで」

ええやん。

というかサラダ一皿でベジタリアンって。

「こういう仕事は、なんていうか、肉食でいかないとダメだと思うんですよ」

カレーは、肉メインじゃないっすよ。

 

若社長は終始、私たちに気前よく振る舞ってくれました。

あのつかみどころのない感じが、彼の斬新なアイデアを生みだしているのかもしれません。

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