いつか時間が経てば

「ぼくこんな顔してない」

子供の笑い声が、店内を凍りつきます。

 

流しの絵描きさんが、ハーグストゥーヘンに一日滞在。お客様の似顔絵を描いて販売していました。午前中から店に入った画家の男性はじきに還暦だといいます。絵を描いて各地をまわって歩いていて、ハーグストゥーヘンには年に一度訪れることになっていますが、不定期でいつ来るのかは旅の事情によるといいます。

「ぼくこんな顔してない」両親と三人で訪れた未就学児童の男の子が、父親に依頼され描いたその画家の絵を見た後のことでした。

たしかに、絵に疎い私が見ても、おせじにも似ているとは言えませんでした。独特なタッチ。デフォルメしているわけではないのですが、正直、賛否両論起こりそうな絵ではあります。

その子のお父さんが、

「いや、すごい似てますよ。目の印象とかすごく特徴とらえられてる」

本音にも聞こえるし、お世辞にも思えました。

画家の男性は、何も言わず、笑います。無口な方なのですが、愛想がわるいわけではありません。男性は男の子の頭をなでて、

「今度来た時は、もっとうまく描けるようになっておくね」

と言います。

なんとかその場の空気がやわらぎました。

 

男の子は持っていたミニカーを画家の男性に手渡しました。

二つ持っていたうちの一つです。

次に来るときまでの間、かしておいてあげるという意味だと思います。

男性の表情を見ると、

尋常ではないくらいうれしそうでした。

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