占い師のネタ元

「じゃあ、木抜君さ、彼女がいらいらしています。どうしてでしょう。ヒント、彼女を怒らせるようなことはしていない」

「ええと、月が満月だった、とか?」

最初は驚きの表情を見せた井上さん。

「じゃあ、これは?」と言ってまた問題を出されましたが、すぐに答えを出すと、苦笑いをうかべて、「正解」と言いました。

その後、井上さんは気の遠くなったような目をしていました。ときどき僕の方を見ているようでしたが、気づかないふりをしました。

僕が「正解」を出し続けたのは当然のことです。答えを知っていたからです。

次にどんな質問がくるのかまでも。

 

(どこかで、聞いたことがある)

テレビを見ていたとき、気になったことがありました。人の心を読むことに長けたメンタリストという人がスタジオの観覧者たちを驚きに包んでいました。皆、口々に「えー」とか「キャー」とか言って口を手でつぐむのです。

メンタリストは、

「今言ったことはこの本の中にすべて書いてあります。詳しくお知りになりたいという方は、書店でお求めを」と言い、司会進行役が「なんだよ、宣伝かよ!」とつっこみをいれて出演者、客席ともスタジオは笑いに包まれました。

このメンタリストが言っていた内容こそ、井上さんのあのクイズでした。合間を見ては僕の肩を叩き、小声で「ここだけの話だよ」とやってくるそれです。

井上さんは、あのメンタリストの本を読み、自分が発見したかのごとく僕に話していたのです。僕は、「わー、すげえ。そんなの初めて聞いた」と目を見開きありがとうございますたびたびと感謝の言葉を口にしていました。誰にも言わないことを条件にです。たぶん僕が他の人に言えば、ネタ元がばれると考えたのでしょう。

と、昨日まではそう思っていたのですが、どうもそれが違うことが分かってきました。

他のスタッフさんから、「井上さんが最近占いの館に通っているらしい」という情報を得たのです。占いだか人生相談だかよくは分からないのですが、とにかく井上さんに《ことづて》をしている人物がいるというのです。

 

ここからは僕の推測ですが、井上さんは、メンタリストの存在を知りません。

占い師がメンタリストの本の内容をまるぱくりしていることに気づいていないのです あるいはもしかすると、その占い師こそが、あのメンタリストなのでしょうか。

いずれにせよ、すべて本に書いてあることなわけですから、千円ちょっとで購入すればいいわけです。占いに毎回通うとなれば大変な金額になってしまうことくらい僕にでも想像ができます。

早く教えてあげないと大変なことになる。でも、このことを井上さんに伝えるってことがそもそも、酷な話。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメントフィード

トラックバックURL: http://www.iyashinohaugstuhain.com/%e6%9c%a8%e6%8a%9c/%e5%8d%a0%e3%81%84%e5%b8%ab%e3%81%ae%e3%83%8d%e3%82%bf%e5%85%83/trackback/