「Am I loser?」 yoku aru koto desu.

これは義理、それとも本気?

「本気の義理になります」

そう言って手渡されたチョコを各自、ああおいしいとわざわざ言葉に出して各自ポリポリこそこそ食べていました。これよりもっと重要な事態は、その一時間ほど前におきていました。

 

この日、一組のカップルが誕生することは儚くも叶いませんでした。

「そろそろお時間となりますので、お皿を下げさせていただきます」

個室席に一人たたずむ男性はしばらく遠くを見つめていました。少し経ってから、私に小さく首を傾けお願いしますとおっしゃいます。

食器を片づけ終えるころに、そのお客様は私にこうおっしゃいました。

「もしよかったら、私の話を聞いてもらえませんか?」

男性の席の向かいに座るよう促された私は、席に着いてから、そのいきさつをお聞きすることになりました。

 

男性は、初めて合う女性を待っていました。

ハーグストゥーヘンに午後七時。約は半年前に入れてありました。今日会うことになっていた女性と知り合ったのは三か月ほど前だそうですから、それより以前から予約を入れていたことになります。

男性は初めて会って、ここでプロポーズをしようと考えていたと言いました。

あまりにも自己都合的なのは明らかです。それでもと男性は言います。

「それくらい、この一年は調子がよかったんです。女性を知ったときも、この人なら間違いないって」

いろいろと疑問に思うことはありましたが、自信があって今日の予定を立てたのだそうです。私は「お店が入り組んだところにあるから、分からなかったんじゃないですかね?」と聞きましたが、それなら電話に連絡があると思うと男性はおっしゃいます。

 

お店からのプレゼントでチョコレートをお客様にお渡ししました。

「意中の人以外からチョコをもらうことになるとはね」

私からというより、当店からです。

ありがとうの言葉の後、お財布を取り出そうとされましたが、お代は結構ですとお伝えしました。

そうですか。すいませんねとおっしゃると、

「Am I loser?」と言って、お店を出て行かれました。

 

Son na koto ari masen.

yoku aru koto desu.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメントフィード

トラックバックURL: http://www.iyashinohaugstuhain.com/%e6%b2%b3%e5%90%88/%e3%80%8cam-i-loser%e3%80%8d%e3%80%80yoku-aru-koto-yo/trackback/