「こことてもキニイリマシタ。」

「それは、たぶん、ヘンケンです」そう言って、彼女は私のことを気遣いながらカタコトで笑顔をなげかけてくれました。

こんな商品どうかな、『パクチーパン』と思いつきで私が商品を提案したことに対する反応です。焼き上がったときパクチーの匂いで店中が包まれてしまうので、パクチーパン屋さんというイメージが付きかねないからと却下されてしまいました。それでも、アイデアをありがとうと彼女は言ってくれました。

大学のクラスメイトである留学生の彼女から、ハーグストゥーヘンを見学してみたいと連絡があったのは私のSNSを彼女が見てくれたことがきっかけでした。学校で話しをしたりするほどの仲ではなかったのですが、電話番号は交換してあったため、今回コンタクトをとることになったのです。

 

「いいです。こことてもスキデス。キニイリマシタ。」店内に入ってすぐ、そう言って笑顔を見せてくれた彼女。私がホールでオーダーをとっている間も彼女はしきりにメモをとって店内を研究しているようでした。

「どうしてこのお店はこんなにたくさんメニューがあるのですか?」と唐突に彼女に聞かれ、そういえばどうしてだろうと、自分でもあまり深く考えていなかったことに気づかされました。もしかすると、他の店にはない特徴の一つがそれで、多種多様なお客様が来店されるのもこれが理由かもしれないと思いもしました。逆に、他のお店で当たり前にあるものがなかったりします。いわし定食はあるのに、さんま定食がなかったり……。

 

仕事が一段落したところで彼女に聞いてみました。

「どうしてハーグストゥーヘンなの? 他のレストランで働いたりはしないの?」

すると、ああそれは、と同じような質問をどこかで聞かれたことがあるのか、慣れた口調で彼女は言いました。

「学業がオロソカニなったり、違法就労に巻き込まれたりすることがあります。なので、学業がおろそかにならない程度のアルバイトをするしかありません。そうなると、ほとんど仕事は限定されてしまいます。はい。」

チェーン店がたくさん咲いては散っていくこの国で、ハーグストゥーヘンが今日まで存続してきたことに彼女は非常に関心を抱いていました。

「ワタシの国でもこういう感じのお店あります。だから、ナツカシイです。」

いずれは母国に帰って自分の国オリジナルのものを作りたいと彼女は言います。帰り際、「また学校でアイマショウ」と言ってくれました。

 

最近うれしくないことが続いていたので、彼女との出会いに希望の芽を見ることができた気がします。考えてみれば、悪いことばかりが続くことの方が、確率的には難しいんですよね。そんな当たり前なことに気づかせてくれた彼女に感謝したいです。またじっくり話がしたいです。

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