タックス・ヘイブンとステーキセット

「あの人から目を離しちゃだめだよ」

スタッフにそう言われた先を見ると、髭を生やした50代位の男性が新聞を見ながら首を時折横に振っています。

どうしてですかと聞くと、どうしてもだとスタッフ。

その男性に注文のあった特上ステーキセットを届けしました。

男性は料理を置いた私の方を向き、目を合わせると、

「どうしよう」

と言って小さくただんだ新聞をテーブルの上に立て、そこにおでこをのせました。

どうされたのですかと聞くと、

「タックスヘイブン。取り調べ、うけるかもしれない」

言った後、

「よし。もう、考えてもしょうがない」と思い直したようにステーキをお召し上がりになりました。

意外にも、お金持ちの人なのかもしれない。そう思ったのと、どこかでこの人見たことあるなという感じを受けました。メディアで、見たのかな。

 

しばらく忙しい時間が続きました。

「あの人は?」

とスタッフに言われた時にはもう遅く、あのタックスヘイブンさんはいませんでした。

無銭飲食。

「まあ、ああいう人が世の中にはいるから。たまには人を疑う心を持たないと」

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