スポーツカーから見た景色

上京してきたとき、付き合っていた男性がとても派手な生活を送っていました。と言っても、当時はそれが普通というか、それほど珍しくない時代だったとも思います。

 

今の若い人の金銭感覚からは考えられないかもしれませんが、いわゆる高級車、スポーツカーに乗って、仕事終わりにはその人が迎えに来てレストランへ連れて行ってもらったり、住んでいた私のアパートまで送ってもらったりしていました。

彼がなぜ私に興味を持ってくれたのかはよく分かりません。というのも結構かっこいい人で、ルックスだけでなく性格もいい、お金もそこそこ持っている。業界で働いていると言っていましたが私も詳しいところは知らないままでした。聞こうとすると、

「言ってもよく分からないと思うよ」といつもはぐらかされてしまいました。

車で港町をデートをしていたときの景色は今でもキラキラと胸の奥で輝いて、当時はまだカセットテープでしたが、彼が車内で流してくれた曲は忘れられず聴けば今も高揚します。

 

別れてしまったのは、彼の態度が理由でした。

外を歩く家族連れにわざとクラクションを鳴らして、「じゃまなんだよ」とつぶやいたときがあります。気がたっていたのか、何かあったの?と聞くと、「どうして?」と逆に質問されてしまいました。そのときが始まりだったと思います。

その次のドライブ、驚くほど彼は陽気で、運転中にも関わらず立ち上がって頭を天井にごつんごつんとぶつけて見せて、「今日、すごく楽しいんだよ」と私の方を向いて目を輝かせました。危ないから前を向いてと言うと、立ったまま前を向き「見てるじゃん前」と再度横にいる私の方を向きました。分かったから、とりあえず座ってよと言うとようやく座り通常運転に戻りました。

ちょっとでも前の車がスピードを遅くするとすぐにクラクションを鳴らしてせかしたりしました。言葉使いは以前にもまして悪くなっていき、そんな彼を見ていて、何か自分には手におえない気がしてきたのです。それでも私に対する優しさは見せてくれていたので、別れるきっかけが作られないまま数か月が過ぎました。

 

私がある時から連絡をとることを止めたことで彼とは自然消滅という形で別れることになりました。もっと分かってあげていればと、彼の体が痩せていってしまった原因に気が付かなかった自分に悲しくなるときがあります。彼の育った環境が原因だったのか、私が未熟だったのか。あるいは、時代がまだ追いついていなかったからなのかもしれません。

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