訪問落語

「お一人ですか?」

言ったのは私ではなく、お客様の方でした。

 

深夜、お客様の出入りが少ない時間があります。お店には私一人。そこへやってきたのが、訪問落語をやっているという男性のお客様です。

「もしよろしければ、いま、5分間無料で噺(はなし)をさせていただいております」

仕事をしなければならないのでと伝えると、失礼しましたといったんはお下がりいただいたのですが、待っていらっしゃるようだったので、他のお客様がいらっしゃるまでと断りを入れて、お願いすることにしました。

 

男性はきっちり五分間しゃべって、ちょうどそのときセットしたタイマーが鳴りました。

「ちょうどでございます」

場がなごんだところで、

「延長、どういたしましょう?」

おいくらになるんでしょうかと聞くと、

「10分に、1000円づつあがってまいります」

まるでタクシーメーターみたい。ちなみに、何分くらい続くものなんでしょうか。

「大体、ながいものですと1時間くらいでしょうか」

えっ、そんなに? 他のお客様もいらっしゃるかもしれないから、

「じゃあ、最初だし、10分お願いします」

まいどあり。そうおっしゃると、10分きっかりの落語を聞くことに。

そのあと、他のお客様が来るまでかなり時間が空いてしまって、もっと長く聞くべきだったかなと少し反省しました。

それにしても訪問落語なんて、おもしろい商売があるものです。

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