うれしい手紙のはずが
みんなの顔がどんどんとこわばっていくのが分かる。
ピーク時間帯が過ぎ、店が落ち着いてきたころ、休憩室にスッタフを集めて手紙を読んだ。
「みんなには本当に迷惑をかけてしまいました。来週戻るのでそれまでよろしく。」
店長と副店長が戻ってくる。うれしい叫びが上がる。はずなのだが、
現実はそうではなかった。
助っ人で来てくれていた新人女性スタッフが、その手紙が読まれた後、こう言った。
「みなさんとは、あと少ししか一緒にいられませんけど、最後までがんばりますのでよろしくお願いします」
ホールスッタフの女の子と、深夜スタッフの女性の目には涙がうっすらとにじんでいる。男性のホールスッタフは「こちらこそよろしく」と言って笑顔を送った。
そのかたわらで、厨房スタッフの先輩と後輩の目が点になっている。
まるで、パンツ一丁で登校していたことに、自分の席についた時ようやく気がついたというような、まさに『青ざめた』表情をしている。(分かりづらいかもしれないが、これが一番しっくりくる表現である)
でも、仕方がない。
彼らにとって彼女は、愛しい人という範疇を越え、すでに天使という存在にまでのぼりつめているのだから。
私たちはよく忘れがちだ。終わりは必ずやってくるということを。