赤ちょうちんカウンター

「最近の流行歌にはついていけなくてね。みんななんていうか、自分のことしか考えていない。」そう言って、コップに入った残りのお酒を渋い表情で飲み干すとお客様は、「ママ、もう一杯同じのちょうだい。それとさ、するめもらえる? あぶったやつ」

初めて《ママ》と言われました。ちなみに私はまだ学生です。でも、そう言わせる空気がこの場所にはあるのだと思います。

 

本日より、夏限定ということで始まった《赤ちょうちんカウンター》。いつもはただのカウンター席なのですが、夏だけ赤ちょうちんをぶらさげて、ワインやウイスキーより焼酎や酒を中心に棚にならべ、むかし懐かしいメンコや駄菓子を飾り販売しています。さっそくこれに反応したのが定年退職組の常連さんお二人です。店長のお知り合いで、ほぼ毎日当店にいらっしゃいます。

するめの次はえだまめにいき、ラストはスイカ。アイスクリームは次の日にとっておくと言います。このカウンターのそばに併設しておいてあるのが、いわゆる流行歌を蓄音してあるジュークボックスです。このジュークボックスは、《NEW》というテロップがついている箇所があり、それが80‘sの初期の楽曲になっています。《NEW》なのに私がうまれるずっと前。

常連さんは言います。

「昔は一人一人で違う音楽を聴くんじゃなくて、みんなで同じ歌謡曲を聞いていたもんだよ」と。

その時でした。あるものを見つけて常連さんが言います。

「あれ、この蓄音機、イヤホンをつけて聞くジャックがついているよ。やっぱり、最新式は便利だねえ」としたり顔でした。