赤ちょうちんの下 あのときを思い出せ

先週から始まった赤ちょうちんカウンター。通常のカウンター席に赤ちょうちんをぶら下げて、昔懐かし屋台の雰囲気につられてお客さんたちが今日も集ってきました。

 

カウンターの近くに配備したジュークボックスが人気となり、みなさん昔の曲を求めてコインを入れてはレバーを引き、ジュークボックスが自動で選曲する懐メロが流れてくると肩を組んで一緒に歌い合ったりなんかしています。他のお客様に迷惑がかかるかもしれないのでなるべく小さい声でお願いしますとお願いすると、

「ママ、ママは優しいね。そんなこと言ってくれる人がこの社会にいっぱいいてくれれば、みんな幸せになれるのにね。」

ちなみに、私はまだ学生です。ママと呼ばれるには若干、違和感があります。ただこの赤ちょうちんカウンターに座っていると、そう言いたくなってしまう何かがあるようなのです。

 

飲み始めた時点では、「今日は止まらないよー」と言っていた常連さんたち。一人のお客さんがトイレから戻ってくると、「おっ、この曲知ってる、懐かしいなー」と言って、「このときが、ピークだったよな」と続けました。刹那、あれだけはしゃいでいたお客さんたちが、まるで葬式の近親者たちのようにしゃべらなくなってしまったのです。ジュークボックスからは私の知らない楽曲が、まるで鎮魂歌でも奏でるかのように穏やかに、店内に響いていました。

 

「お客さん、もう少ししゃべりましょうよ。あんなに元気だったじゃないですか、さっきまで」とは言いませんでしたが、そのくらい、先ほどまであった覇気は消し飛んでいました。

常連客の方たちは、その後静かに会計を済ませて帰っていかれました。