1月2016

「待つ」ことにかける

「まだ」と、

いうことなんだろう。

 

先週、家の近くに来ていた移動販売の焼き鳥屋を私は待っていました。

雨が降った夜、寒空の下、私の心は何かを「待つ」ことにかけていたように思います。疲れてもいました。仕事のせいでかどうかは分かりません。

焼き鳥屋が来るだろうと、食材も買わずそのまま帰ってきていました。家には食事といえるようなものは用意されていません。このまま焼き鳥屋が来なかったらどうしようかという思いになります。

 

待っていると、女性が現れました。なんともなく私のいる場所から少し離れたところに陣取って、何かを待ち始めたようでした。もしかしてと思い、

「焼き鳥屋さん、ですか?」

女性はうなずきました。

昔の漫画に出てきそうな出で立ちで、アパートの看板娘のように厚手で白のカーディガンを羽織り長いスカート姿。いまどき珍しく三つ編みでメガネを着けています。とても素敵に映りました。

こんな出会いが今の時代にもまだ残されていたなんて。

 

さしている傘の上に、雨がトントン落ちてくる。地面をたたく雨。それぞれ響きが違う。そんなどうでもいいことを考えているよりと思い、私は女性に話を切り出しました。

「焼き鳥屋さん、来ますかね?」

そうですねと、前を向いて少し考えてから、

「今日は、ダメかもしれませんね」

女性はそう言って、こちらに会釈をして行ってしまいました。

冬の雨のせいか、女性の姿はすぐに見えなくなりました。

 

その後、焼き鳥屋さんを待ってみましたが、結局、来る見通しはたたず、あきらめて私は家に帰ることにしました。

帰ってから、非常食として用意してあった缶詰をあけて食べました。そうしてしばらくしてから、私は眠りにつきました。

日帰りバスツアー

「きれいなお水と空気で出来た、おいしいお蕎麦を食べてお家に帰ろう」

日帰りバスツアーの宣伝広告です。

僕がこのツアーに参加した理由は都会育ちの人がいちご狩りに行く感覚とは少し違っていたかもしれません。

 

年末年始、地元に戻らなかったためか、自分の中でなにかが欠けている状態が続いていました。いくつか旅行の広告を調べて、今回思い切って日帰りツアーということで行ってみることにしたのです。それが間違いのもとでした。

安いのにはわけがある、業界では常識です。

お世辞にも大きいとは言えないバスの中にはお客さんが全座席の半分くらいしかいません。混雑していなくていいなとは思ったのですが。

現地に着くと、確かに空気はきれい。遠くには都心のビル群が見えています。こんな近くに穴場があったなんて。

予想と違う事態は到着してしばらく経ってから起きました。出来上がったそばが、そのまま出てきて食べられるのかなと思っていたら、ソバ摘みが始まったのです。

 

自然とふれあいましょうというガイドさん。でも、やけに一人が摘み取る範囲が広い。これ、自分の食べる量をはるかに超えていないか? その後は、そば粉にする過程などを経験し(これも一人がやる量をはるかに超えている)、日が暮れてきたところで、ようやくソバを食べられることに。

当然それぞれで切ったそばなので、形はいびつ。でもお腹がはんぱではないくらい空いていたのでみんな文句も言わずに食べました。でも、自分で作った分だけしかないわけですから、あれ、もうお終い?という感じ。 もうちょっと作っておけばよかったという顔をする人もたくさんいたように思います。

「終了―!」というガイドのかけ声でツアーの終わりが告げられると、やけに重たい袋詰めのお土産を渡された後、そのままバスに乗せられて帰ることになりました。

バスの中では皆ぐったりとしていて、ほとんどの人たちが眠りについていた様子でした。

いったいどんな夢を見ていたのでしょう。

 

お土産、開けてみました。『そばつゆ』でした。

詐欺話もよもやま話

振り込ませ詐欺のドキュメンタリー番組をテレビでやっていました。深刻な話なのに、なぜか面白いのです。というのは、この番組、振り込ませ詐欺自体を特集するのではなく、振り込ませ詐欺の集団と話をするのが止められなくなってしまった【おばあさん】に密着しているのです。

 

おばあさんは伴侶を随分前になくしてから長い間一人身でした。子供もいなかったため、ずっと話し相手に困っていたそうです。そこで、ある日かかってきた振り込ませ詐欺の電話相手と話をして、はまってしまったそうなのです。

「お母さん。会社のお金競馬で使ったのがばれて、300万円必要になった」

「なにやってんのあんた」

ここまでは、普通です。

「またなの? 前は500万円だったじゃないの」

詐欺側も驚いた様子で、

「うん。そうなんだけどさ……」と戸惑った様子。

「それよりね、ヨシマツ。あんた最近、始まったあのドラマ知ってる? お父さんと娘さんが入れ替わっちゃうやつ。あれ、面白いわよー」

ここらへんから私は笑いが止められなくなっていきました。息子の借金より、自分の身の上話に切り替わってしまったから。

「そうだね。今度見ておくよ。それよりお母さん、300万円なんだけどさ……」

「そうだ、300万円で思い出したけど、うちもさ、300万円あれば家の改修工事が出来たと思うのよ。そうしたらお母さん、階段からころげ落ちないで済んだと思うの。あんとき、あんたがいてくれればね」

もう、お互い嘘のつきあいっこがひどいのです。嘘と言うより、願望というべきでしょうか。

こんな感じで話を引き延ばして、次にまた電話をしてくるように約束させて電話を切るのです。インタビューのおり、女性はこう言っていました。

「テレビ見てるときは話のタネを探しています。それでいいなと思ったらこうしてメモを取っておくんです。それでまた電話がかかってきたときに息子と話をしてほっとするんです。もう、やめられなくなっちゃいました。」

最後にはインタビュアーにも話を振って、こう言っていました。

「なにか、話のタネ、ありませんかね?」

 

こういう場合、女性のやっていることは問題になるのでしょうか? いい関係のような気が私はしましたけれども。