深夜の就職希望者

深夜にいらっしゃるお客様は、ときに事情を抱えている人たちがいらっしゃいます。このお嬢さんも塁に漏れません。

「ここで、働かせてもらえないですか?」

 

いろいろ困っているのかなと思いました。ですが、残念ながら私は権限をもっていないため、日中に働く店長にかけあうことまではできるのですが、すぐ雇うというのは出来かねますと伝えると、「そうですか……」と女性はうつむいてしまいました。

後ろからクスクスという笑い声が聞こえました。

後方には、その以前から時間をつぶしていた男性が二人。どちらもニット帽と黒縁メガネにひげを生やしていて、靴はスニーカーなので会社員という感じではなさそうです。男性二人は、パソコンを先ほどからいじっているようで、お店の中をチェックするように店全体をながめていました。

女性はテーブル席にかけると、

「一番安いのって、どれですかね?」

と、財布のひもは抑えたい様子。

すかさず男性二人から笑い声が聞こえました。もうこの二人には帰っていただこうと思っていたところ、直後に男性二人からお勘定の声がかかり、支払いを終えると帰って行きました。

 

女性にはその後、パンケーキセットのサービスをしました。無料です。店長にも仕事の件掛け合ってみますと伝えると、

「ありがとうございます。でも、夜のお仕事の方なんです」と、すでに日中も働いていて、それ以外で深夜帯に働こうとされていたのでした。

来てくれればまたサービスしますからねと伝えると、お店を出て行くとき、笑顔になってくれたので少し安心しました。