詐欺話もよもやま話
振り込ませ詐欺のドキュメンタリー番組をテレビでやっていました。深刻な話なのに、なぜか面白いのです。というのは、この番組、振り込ませ詐欺自体を特集するのではなく、振り込ませ詐欺の集団と話をするのが止められなくなってしまった【おばあさん】に密着しているのです。
おばあさんは伴侶を随分前になくしてから長い間一人身でした。子供もいなかったため、ずっと話し相手に困っていたそうです。そこで、ある日かかってきた振り込ませ詐欺の電話相手と話をして、はまってしまったそうなのです。
「お母さん。会社のお金競馬で使ったのがばれて、300万円必要になった」
「なにやってんのあんた」
ここまでは、普通です。
「またなの? 前は500万円だったじゃないの」
詐欺側も驚いた様子で、
「うん。そうなんだけどさ……」と戸惑った様子。
「それよりね、ヨシマツ。あんた最近、始まったあのドラマ知ってる? お父さんと娘さんが入れ替わっちゃうやつ。あれ、面白いわよー」
ここらへんから私は笑いが止められなくなっていきました。息子の借金より、自分の身の上話に切り替わってしまったから。
「そうだね。今度見ておくよ。それよりお母さん、300万円なんだけどさ……」
「そうだ、300万円で思い出したけど、うちもさ、300万円あれば家の改修工事が出来たと思うのよ。そうしたらお母さん、階段からころげ落ちないで済んだと思うの。あんとき、あんたがいてくれればね」
もう、お互い嘘のつきあいっこがひどいのです。嘘と言うより、願望というべきでしょうか。
こんな感じで話を引き延ばして、次にまた電話をしてくるように約束させて電話を切るのです。インタビューのおり、女性はこう言っていました。
「テレビ見てるときは話のタネを探しています。それでいいなと思ったらこうしてメモを取っておくんです。それでまた電話がかかってきたときに息子と話をしてほっとするんです。もう、やめられなくなっちゃいました。」
最後にはインタビュアーにも話を振って、こう言っていました。
「なにか、話のタネ、ありませんかね?」
こういう場合、女性のやっていることは問題になるのでしょうか? いい関係のような気が私はしましたけれども。