「待つ」ことにかける

「まだ」と、

いうことなんだろう。

 

先週、家の近くに来ていた移動販売の焼き鳥屋を私は待っていました。

雨が降った夜、寒空の下、私の心は何かを「待つ」ことにかけていたように思います。疲れてもいました。仕事のせいでかどうかは分かりません。

焼き鳥屋が来るだろうと、食材も買わずそのまま帰ってきていました。家には食事といえるようなものは用意されていません。このまま焼き鳥屋が来なかったらどうしようかという思いになります。

 

待っていると、女性が現れました。なんともなく私のいる場所から少し離れたところに陣取って、何かを待ち始めたようでした。もしかしてと思い、

「焼き鳥屋さん、ですか?」

女性はうなずきました。

昔の漫画に出てきそうな出で立ちで、アパートの看板娘のように厚手で白のカーディガンを羽織り長いスカート姿。いまどき珍しく三つ編みでメガネを着けています。とても素敵に映りました。

こんな出会いが今の時代にもまだ残されていたなんて。

 

さしている傘の上に、雨がトントン落ちてくる。地面をたたく雨。それぞれ響きが違う。そんなどうでもいいことを考えているよりと思い、私は女性に話を切り出しました。

「焼き鳥屋さん、来ますかね?」

そうですねと、前を向いて少し考えてから、

「今日は、ダメかもしれませんね」

女性はそう言って、こちらに会釈をして行ってしまいました。

冬の雨のせいか、女性の姿はすぐに見えなくなりました。

 

その後、焼き鳥屋さんを待ってみましたが、結局、来る見通しはたたず、あきらめて私は家に帰ることにしました。

帰ってから、非常食として用意してあった缶詰をあけて食べました。そうしてしばらくしてから、私は眠りにつきました。