3月2016

輝かしい家族の未来

「私もピアノ習いたい。バレエやりたい」

「パパが教えてあげるよ」

「やだ、習いに行く」

「同じだよ。パパがやるのと」

つま先だちをして、ほらやってごらんと言って、娘さんに見せると、泣きそうになってだだをこねられています。

どうしてこんな時間にお父さんと小さな娘さん二人なのかと私は少し心配になりました。目がうつろになり、だんだん眠くなってきているのが分かります。当然です。もう日付が変わる頃ですから。

 

聞いてみると、内情はこのようなものでした。

入院している奥様が、この近くの病院にいてその看病のかたわら、当店に立ち寄られたということでした。

娘さんは小学校に上がる年齢らしく、他の子たちは習い事などを始めているということで、それをうらやましく思った娘さんがおねだりをしているのだと、眠る娘さんの横でお父さんが教えてくれました。

奥様がご病気とは大変ですねと私が言うと、

「そうですね。でも、会うときはいつも笑顔でいます。そうすると、向うも笑顔になって、相乗効果があるみたいです」

娘さんが無邪気でいてくれることが、精神安定剤でもあるとお父さんは言います。いつでもいらして下さい、今度はご家族みなさんで。うなずいたお父さんに娘さんがかつがれて帰っていかれました。

自分には関係ないことなのに

「実は、三股かけてたんだって」

個室への料理を届け終えたときでした。三人の男性がいて、皆さん身なりとしては、一人はびしっとしたスーツ、残りの二人はカジュアル。サラリーマンではないのかなという感じでした。

 

私が料理を給仕していたとき、三人のお客様は全く、しゃべりませんでした。私が入室する前には会話が聞こえていたにもかかわらず。なにか、秘め事があるのではないかと思いました。

聞こうとしていたのではないのです。私が退出した瞬間にはもうその話は通常のボリュームで再開していましたから。筒抜けてしまったのは、それくらい、周囲に構っていられないくらい、お客様たちは興奮していたのだと思います。

私はショックを受けました。業界人であろう三人のお客様は、ある女性タレントが三股をしていると話していました。私が純粋に清楚な女性だと信じていたタレントが三股。

 

真実はどこにあるのか、それは私には本来関係のない話。女性タレントとその周囲の間での話。なぜ明るみに出てしまったのか、あるいは嘘か。

どうして気になるのでしょう。自分には関係のないことなのに。

高層タワーの階段で

最初は写メを撮ったり、自撮り棒で撮影しながらだったのですが、途中から面倒になり静かに階段を上っていきました。

山登りに行くつもりだったのが、電車が止まってしまい、いったん地上に出た私たちの目に某高層タワーが飛び込んできました。誰かが「あれだよ」と言ったことから、私と友人の二人は、登山の恰好で高層タワーの階段をのぼることとなりました。

 

途中、人が昇ってきていないのを確認すると、ここらへんで食事にしようと誰かが言って、おにぎりなどをぱくつきました。みんな何を考えていたのか、あまりしゃべりませんでした。自分たちのやったことがばかばかしかったのか、それともいろいろと考えていることでもあるのか、あるいは、言いたくないのか。

「私あそこで働く」

友人の一人が指さしたのは、名前は分かりませんが、多くの有名企業が入っていそうな新しい高層ビルでした。

何ていう会社?と聞くと、

「分かんない。けど、あの中の何処かで働く」

確かみんな少し笑ったかと思います。でも、話した内容の多くは覚えていません。想い出が出来たというより、目的地を漠然と確認したような気がしました。