深田

保証人になってもらえませんか?

最初、そのお客様は、飲み物はコーヒーのみにして、それ以外、ケーキなどを含め食べ物を5品から6品ほど注文されました。他にも注文されたものがありましたが、私の働く深夜帯には扱っていない商品だったため、それらにつきましてはキャンセルさせていただくこととなりました。

 

お腹がすいていらっしゃるのか、あるいはいわゆる大食いの方なのか。かなりの量を注文されるなという印象です。ただ、注文の商品をお出しすると、コーヒーを飲むくらいであとは手を付けていらっしゃいません。どうしたのだろうと思っていたところ、お客様がおっしゃいました。

「あの、いきなりで、大変申し上げづらいのですけど、はっきり申し上げます。保証人になっていただけませんでしょうか?」

私は戸惑ったあと、思わず笑い声をもらしてしまいました。どういうことなのかと。

「失礼ですけどオーナー様でいらっしゃいますよね?」

違いますと申し上げた途端、お客様は、驚かれた様子。スタッフであることを伝えると、では、オーナーはどちらにと聞かれたので日中に勤務をしていることをお伝えしました。すると、

「そうでしたか、では、あなたに、お願いさせていただきたいのですが?」と、今度はオーナーではない平のスタッフと分かった私に、保証人になってくれるようお願いしてきました。

 

依然、戸惑う私でしたが、聞くと、家を購入したり老後の施設入居のために保証人が必用になるらしいのですが、仲の良かった友人たちに断られ続けたため、しょうがなく一人一人この人だと思う人にあたっているそうです。

男性はせっぱつまっていると言います。私がお断りしたあと、他のスタッフを紹介してくれるよう頼まれましたが、それもいたしかねる旨お伝えしたところ、

「もう、いいです。どんなに私が勇気をもってこの話をしたか。気を遣ってこれだけ多くの料理を注文したのに。あなたにはそれが分からないんだ!」

男性は言うと、千円札をテーブルにおいて出て行ってしまいました。

私はしばらくの間、あっけにとられてしまいました。ちなみに、注文された料理は千円では足りません。

午前0時に帰る客

「うちのおうどん、おいしいですか?」

少しやせ型のサラリーマンさん。午前0時、数十分前にやって来て、肉うどんをいつも召し上がっていかれます。

スーツを着てらっしゃるのですが、派手さはなく、古風というか、堅実な印象を受けます。いつも静かに一人でおうどんをすすっていらして、曜日は違うときもあるけれども、大体同じような時間帯にいらして午前0時には帰って行かれます。

この近くに住んでいらっしゃるのか、それとも、終電に乗って、お住まいの地域にお帰りになるのか。

 

おうどんのことを聞くと、不慣れな笑顔で、お金をためていることを教えてくれました。何かやりたいことなどがあるのですかと聞くと、

「でも、たいしたものではないので」と、恥ずかしいのか、謙遜していらっしゃいます。

ごゆっくりどうぞとお伝えしましたが、そうでした。お客様、やはり午前0時にはお帰りになりました。

矛盾があると

「ようやく慣れてきたのに、いじわるを働く人が上司になっちゃって。会社の組織にも問題があると思うんです私は」

そうおっしゃるのは、たまにこの店に来てただずんでいらっしゃる40代手前くらいの女性のお客様です。

 

この女性の言い分は一見もっともらしく思えるのですが、何度か話を聞いているうちに、真実を語っていないと感じてきました。

どういうことかというと、

「旦那にDVを働かれて家を飛び出してきました」と言うのに、指輪をしているのは見たことはないし、「子供が言うことを聞いてくれなくて困っている」と言うのに、ほっぽらかして出てきて大丈夫なのかと思うことなどが以前にありました。

あるときは、「私は一生、結婚できないのかな」などと、結婚して子供がいたはずでは?と思うことがありました。

どの言葉が本当なのでしょう。

 

でも決まって、また来ますと笑顔で言って出て行かれるので、こちらも、またよろしくお願いしますと挨拶をします。

本当のことを言う必要はないのかもしれません。店員とお客様の関係ですし。ただ、ご自身がそれらを嘘だと思っていないとしたら、ちょっと問題だと思います。